研究概要 |
コンピュータグラフィックスの普及に伴い,非常に複雑なシーンのレンダリングが要求されるようになってきた.しかし,シーンの複雑さには際限がなく,コンピュータの計算能力やメモリの容量がいかに向上しても,決して満足されることがない.本研究ではこの問題を,次の2通りのアプローチで解決することをはかった. (1)レンダリングの必要に応じて,モデルの細部を生成する.こうすることにより,同時に膨大な量のシーンデータをメモリ上に展開する必要がなくなり,ハードディスクへのアクセス回数を画期的に削減できる.この考え方としては,フラクタルが有名であるが,本研究では,より表現能力の高いモデリング法としてWrinkly曲面を開発し,さらにその応用範囲を拡張する研究を行なった. (2)圧縮した形式のシーンデータをレイトレーシング法で利用できるようこする.通常のレイトレーシング法では,シーンデータへのアクセスがランダムな順序で行われる.このため,すべてのシーンデータをあらかじめメモリ上に展開しておかざるを得ない.このため,シーンデータが膨大になってメモリの容量を超過すると,ハードディスクへのアクセスでスラッシングという現象を生じ,レンダリング速度が極端に低下する.本研究では,レイトレーシング法における光線追跡を,通常の深さ優先探索ではなく,幅優先探索を導入することにより,解決した.またそのアルゴリズムの改良をはかり,1億個の物体を含むシーンを,並の性能のPCを用いて,50分程度の時間でレンダリングすることに成功した.
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