研究概要 |
平成12年度は,並行論理型言語に基づくシームレスな広域分散プログラミング環境,およびその上での広域分散アプリケーションの構築方法論の確立を目指して,次の研究を行なった. 1.意味論,検証および最適化技術-細粒度プロセスの静的スケジューリングに基づく最適化技術とその理論的基礎を構築した.並行プロセスの動作に関する期待を表わすインタフェースという概念と,それを定式化するための簡潔な表示的意味論を定義し,インタフェースを求めるためのボトムアップ解析が,最適化中間コードの生成手順にもなることを示した. 2.非均質な計算環境上の分散処理系-異なるプラットフォーム上で動作する複数のKLIC処理系を,ソケットインタフェースを利用して透過的に接続することによって,分散KL1言語処理系dklicを試作した.dklicにおいては,分散単一代入変数の実装を主な技術課題として,その基本方式と最適化技法を比較検討した.また,分散環境上の資源を管理するネームサーバの仕様を検討し,試作を行なった. 3.Treecodeインタプリタの開発とdklicへの組込み-分散処理系における述語(コード)移送を実現するために,Treecodeと呼ばれる中間コード形式を設計し,またそのインタプリタをKL1自身で記述した.Treecodeは,KL1プログラムを基底項(変数を含まないデータ構造)として表現したもので,そのインタプリタは純粋なKL1機能のみを利用していることを特徴とする.さらに,本インタプリタを分散KL1の仕様に拡張し,dklicに組み込む実験を行なった. これらの各種検討から,簡潔さを特徴とする並行論理型言語が,広域分散プログラミングのプラットフォームとして利用可能であり,かつプログラミングおよび実装に対して強固な理論的支援が得られるとの確信を得た.
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