本研究の目的は、「多重方向・多重解像度フィルタを用いた特徴抽出と計測に関する基礎手法の確立」および「CT(コンピュータ断層像)やMRI(核磁気共鳴画像)などの医用画像の自動的かつ定量的解析への応用」である。 本研究では、医用画像に対して、種々の(連続した)解像度および方向をもつフィルタ群を適用することにより多チャネルの強調画像を計算する手法を開発した。これらの出力値を組み合わせることにより、画像中の線状構造(血管、気管支など)/面状構造(軟骨、皮質など)/塊状構造(腫瘤など)などの局所構造特徴の識別および抽出を行なう。さらに、抽出された構造特徴の局所方向情報を利用して、(血管)径の変化・(軟骨)厚の分布などの精密計測(定量化)を行なう。本研究では、以上の処理過程を統一的に取り扱う理論的枠組の構築を行い、定量化における理論的精度限界の導出および検証を行った。 本研究の提案手法に基づき、実際に、 ・CTボリュームデータからの血管抽出と血管径/方向分布の3次元的精密定量評価 ・MRボリュームデータからの軟骨抽出と軟骨厚み分布の3次元的精密定量評価 を行なう診断支援システムを構築した。これらの問題は、医学的にも最新かつ重要なトピックであり、本手法の適用によって、初めて、自動的かつ高精度なシステムの実現が可能になった。 まとめとして、本研究では、「方向・スケール空間」解析法の確立を行い、さらに、構造特徴の抽出と定量化に関する多様な医用画像解析への応用を示した。
|