第一段階では、実世界から得られたシーン画像を圧縮する方法として何が良いかを検討し、大津の提案した局所自己相関関数が良いという結論になった。また情報圧縮の際、空間解像度をどの程度にするのが良いかを、位置推定誤差が最小になるという基準で決め、1/64が最も良いことを明らかにした。 第二段階では、自己組織的に環境マップを形成する際の各シーンの空間的位置に関する事前確率情報の付与の定式化を行ない、これとベイズ推定の関連を明らかにした。各シーンの空間的位置を2次元座標で与え、これを特徴ベクトルに追加するものである。もちろん、この位置は曖昧性を含む。この拡張特徴ベクトルを用いて参照ベクトルとの距離を計算すると、ベイズ推定と同様に、事前確率と条件付き確率の積に相当するものが得られる。ただし、本手法ではベイズ推定とは異なり、事前確率を正規分布と仮定するという単純な方法を用いている。また拡張特徴ベクトルにおける空間位置の重みをどう決定するかも問題であり、ここでは位置推定誤差が最小になるようにこの重みを決定した。 第三段階では、実ロボットを用いて、建物のあるフロアの廊下の環境マップの自己組織的形成の実現に着手した。これには、全方位ミラーHyperOmni Visionとビデオカメラの接続、ビデオキャプチャカードによるロボット搭載のノートパソコンへの画像情報の取り込み、無線LANによるワークステーションへの伝送、ワークステーション上での自己組織化計算の実行、ロボットへの移動司令の伝送、ロボットの実際の移動実行など、多数の予備的なタスクを行ない、さらに、実ロボットを動かすことに着手した。次年度以降、本格的にロボットを作動させ、実験を行いたい。
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