研究概要 |
この研究は,次のような目的に基づいて開始された. (1)期待値のような確率・統計量の最適化に対する新たなアルゴリズムを構築する. (2)得られたアルゴリズムを,モードの異なる多様な情報源に適用し,人体が行っているマルチモーダル情報処理に近い方式の実現を図る. 平成12年度においては,まず前年度に得られた期待値最大化法(α-EMアルゴリズム)を,マルチモーダル情報処理に適用した.その結果,次のような成果を得ている. (i)動画像におけるオプティカルフローから物体の動きを推定した.この問題においては,α-EMアルゴリズムの高速性を確認することができた. また今年度の後半では,さらに独立性の指標に関する最適化アルゴリズムの構築を行った.これは,α-ダイバージェンスを最小化するものであり,従来の平均相互情報量の最小化に対する一般化となっている.研究代表者は,これをα-ICAアルゴリズム(α-Independent Component Analysis)と命名している.このアルゴリズムは,メモリーをあまり消費せずに高速性を発揮できるものとなっている.従って,かなり大量のデータでも,パーソナルコンピュータで処理することを可能にしたものとなっている.そこで本研究においては,マルチモーダル情報処理の一環として,人間の脳のfMRI画像を解析することを行った.その結果,次のような成果を得ることができた. (ii)α-ICAアルゴリズムを用いて,人間の脳において,静止画については反応しないが,動画像を見ているときには反応する部位があることを確認できた.なお,この部位には,男女差があることも予見されている. 以上のように,開発された手法(1)と(2)は,通常の時系列を含むマルチモーダル情報の処理に対して有効な方法を提供しており,本研究は十分な成果をもって終了できた.
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