研究概要 |
この研究は,次のような目的をもって開始された. (1)期待値や独立性の指標といった確率・統計量の最適化に対する新たなアルゴリズムを構築する. (2)得られた新たなアルゴリズムをモードの異なる多様な情報源に個別適用し,人体が行っているマルチモーダル情報処理に近い方式の実現を図る. 従って,初年度においては,独自なアルゴリズムの開発に重点が置かれ,その結果,次のような成果が得られた. (a)従来のEMアルゴリズム(期待値最大化アルゴリズム)を特例として含むα-EMアルゴリズムを得ることができた.このアルゴリズムは,従来のEMアルゴリズムよりも高速となっている(テレコムシステム技術賞本賞受賞). (b) 上の手法は,未知の信号の分離という独立成分分析(ICA; Independent Component Analysis)にも適用可能であることが分かり,新たにα-ICAという手法を得ることができた.これは,従来の最小平均相互情報量型ICAよりも数倍速いことが確認できた.従って,今後は相当複雑なデータでもパソコンで処理することが可能となった. 第2年度においては,上記の手法をマルチモーダル情報処理に適用し,次のような成果を得た. (i)動画像におけるオプティカルフローから物体の動きを推定することができた. (ii)α-ICAアルゴリズムを用いて,人間の脳において,静止画については反応しないが,動画像を見ているときには反応する部位があることを確認できた.なお,この部位には,男女差があることも予見されている. 以上のように,開発された手法(a)と(b)は,通常の時系列を含むマルチモーダル情報の処理に対して有効な方法を提供しており,本研究は十分な成果をもって終了できた.
|