研究概要 |
本研究の目的は,環境認識と物体認識の協調処理により,光環境が変化する既知の空間内で既知の物体を効果的に認識する手法を構築することである. 研究実施計画に基づき,本年度は以下の研究実績を得た. 環境認識処理: (1)シーン画像の領域分割に関しては,(i)複数の階層型ニューラルネットワークを用いて,カラー画像を関心領域(エッジ,テクスチャ,認識対象物体)に分割するための手法および,(ii)分割領域が光環境によって変動する特性を把握するための手法を構築した.また,実画像に対する実験を行ない,良好な領域分割結果を得た. (2)色情報の変換に関しては,自然光が変化する室内情景を対象として,上述の領域分割手法を適用することにより,同じ物体色を有する領域の面積が,光環境によって変動することを確認した.その結果,具体的な色変換(非線形変換)を行なうために,階層型ニューラルネットワークが有効であるとの見通しを得た. 物体認識処理: (1)回転対称物体の輪郭抽出として,(i)共役直径を用いた楕円弧輪郭線の検出法の耐雑音性,耐変形性を定量的に評価し,実画像への適用を可能とするとともに,(ii)隣接領域を考慮することにより,重複する物体輪郭線の個別物体輪郭線区間への分割の可能性を示した. (2)構造環境情報の利用に関しては,CGによる室内空間を構築し,カメラ視点の移動に伴い変化する実シーンの予測可能性を評価した.その結果,CGによる予測シーン画像が物体領域の意味付けに有効に利用できる見通しを得た. 環境認識処理と物体認識処理の協調動作: (1)数台の汎用PCから構成される仮想的な並列計算機であるPCクラスタを実際に構築し,各処理を担う複数の階層型ニューラルネットワークが協調動作を実現するための学習法を開発し,環境認識処理と物体認識処理の協調動作を実現するための見通しを得た.
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