本研究において提案する感覚統合と行動学習の枠組みをロボットの移動制御に適用し、昨年までに製作したマイクロコントローラをベースとする分散制御システムに軌跡制御のための内界、外界の各センサを実装して、これらの感覚統合によるステアリング制御のソフトウェア開発と実験的検証を行った。ロボットの移動機構は独立2輪駆動型であり、内界センサとして各車輪にインクレメンタル型エンコーダと車体中央に圧電振動ジャイロおよび加速度センサを取り付けた。目標軌跡に対して垂直な方向に床上に等間隔の縞模様を描き、外界センサとして利用した反射型フォトインタラプタからのタイミング信号をマイクロコントローラのインプットキャプチャモジュールに取り込んで移動距離、移動速度、回転半径を計測し、同時に取得した内界センサの情報をステアリング制御の基準値として記憶させた。連想記憶型ニューラルネットを用いて、直線や、ある回転半径の円弧などの基本となるいくつかの軌跡を走行させたときの内界、外界センサの情報と、視覚センサを用いた上位サブシステムからの目標軌跡に関する抽象情報とを統合し、ステアリング制御の基準値との対応づけを学習させた。外界センサが利用できない場合には、抽象情報のみを与えて対応するステアリング制御量を想起させることにより、内界センサのみによる軌跡制御が可能となる。実ロボットを用いた軌跡走行テストにより、使用した内界、外界センサが感覚統合と行動学習に利用可能であることを確認した。次に、マルチエージェントシステムを構成するロボット間での環境情報の統合と行動の協調のための局所的通信方式として、赤外線の入射角度検出機能をもつ空間分割型赤外線無線通信システムを製作し、装置の機能検証を行い、相手ロボットの移動による通信途絶を生じることなく通信ネットワークの生成が可能であることを確認した。
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