研究概要 |
自由な言葉で質問でき,整理された情報空間をブラウジングしながら要求に合致する文献を探せる,電子図書館のためのユーザインタフェースの設計・製作を目指した。これには,(1)質問や文献を概念的に扱う機構と,(2)電子図書館を概念的にブラウジングする機構,を作って対処した。 (1)に関連して,平成11年度には,質問や文献中のキーワードを概念体系中の語で再表現した状況で,質問と文献間の関連性を数量化する方法を定式化した。この方法は,専門分野の文献の検索には非常に有効であったが,Web上にあるような一般の文献に対しては有効性を確認できなかった。平成12年度も,概念階層としてWordNetやEDR発行の専門用語辞書を使って種々の実験を試みたが,やはり有効性は確認できなかった。検討の結果,これら辞書が検索用に作られていないのが大きな原因と結論づけた。 (2)に関連して,ユーザの意向を「適合概念」として動的に学習しながら,電子図書館中を効率よくブラウジングする方法を定式化した上で,ブラウジング用のナビゲータを設計した。ブラウジングの基本は,適合文献は,質問以外にもユーザが既に適合と判断した文献に対し大きな類似度を示す,と考えるところにある。ユーザの適合判断状況を逐次的に学習し,以降のブラウジングに利用するのである。この場合,ユーザが繰り返し電子図書館を利用するうち,そこでの文献配置も次第に明らかになっていくよう配慮した。提案手法の有効性は,従来からの方法との比較の上で,実験的に確かめた。ナビゲータを設計する際には,ユーザの認知負荷の面も十分考慮して行った。
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