研究概要 |
本年度では,次の3つの部分で研究を行った. 1.「マルチバージョンデータベースにおける並行処理制御方式に関する研究」 前年度に引き続いて,ワークフローによって表される作業手順が,協調型データベースの並行処理制御で果たす役割について検討した.協同作業では,修正前のデータも残す,各処理単位の検索できるバージョンに対する制限を設けない,処理単位の後退復帰を避けるといった要求がある.このため,データのバージョンを記憶するマルチバージョンデータベースにおいて,ワークフローに従って作成されたデータ集合は一貫していると定義し,そのようなマルチバージョンデータベースにおける並行処理制御は,処理単位を後退復帰させることなく実用的な方法で実現できることやワークフローで表される一貫性情報は利用者の各種の検索に対する要求を支援するためにも役立つことを示した. 2.「ワークフローに基づく協同作業環境の構築」 1のデータベースの処理単位モデルの検証とフィッドバックをはかるため、DesignLabという論理回路CADシステム上に協同作業支援環境の構築を試みた.この協同作業環境では,CADデータのマルチバージョンを記憶できるとともに,CAD設計の作業手順(ワークフロー)をデータベースの一貫性制約として定義し,それに基づいて協同作業に対する制御を行う.実装されたシステムを通して,1の方法では,グループレベルの協同作業とワークフローに基づく一貫性の管理という2つの要求とも支援できていることを確認できた. 3.「デジタルライブラリにおける協同作業に関する研究」 デジタルライブラリにおける協同作業環境について,協同教材開発・相互学習などの協同作業を支援するためのWEB型協同学習環境管理システムの構築を行っていた.このシステム自身は,すでに実際の教育現場で利用できるようになっている.教材の拡張や共用の可能性を向上するため,各種デジタルライブラリの統合が必要となる。現在,XMLによる統合について研究を行っている.
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