研究概要 |
平成11年度は2年間にわたる本研究計画の初年度として,当初計画に基づいて研究を行い,所期の目的を達成することができた.以下に,得られた成果の概要について述べる. 1.銀行小切手上で照合対象となる印影と署名の分離抽出に関して,印影・署名領域のカラー画像にHSV色空間中でk-平均クラスタリングを適用することにより,印影と署名が精度良く抽出されることを確認した.さらに将来,記入された金額等,必要情報の全てを認識する機能を有する総合的な小切手処理システムを実現するための基礎研究として,小切手画像全体から印影・署名を含む全ての記載情報を抽出する方法を提案し,その可能性を確認した.具体的には,小切手の背景領域は一様な図柄であるという特徴を利用して,小切手画像の部分領域毎の周波数特徴に基づいて背景領域を除去した後,色特徴に基づく領域分割を行う方法である. 2.既に開発済みの印影照合方式をもとにして,本研究で目指しているシステムの照合サブシステムとして十分な性能を発揮できる照合方式を開発した.具体的には,印影抽出時に署名との重なり部が混色のために欠けることに対処するため,抽出された署名画像も参考にしながら抽出時の欠損部分を識別して,照合対象から除外する方式,および照合結果にその確信度を付与する方式である. 3.以上の成果と別途開発した署名照合方式に基づいて,印影照合と署名照合の結果を統合する方式として,各サブシステムの投票による方式についても基礎的な検討を行い,照合精度を向上させ得る見通しを得た.今後さらに効率的な方式を検討し,実務で要求される照合精度を達成する方式を明らかにする予定である.
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