研究概要 |
金型は,一般に,生産設備が不十分な地域に分散した中小企業が中心となって製造しており,受注戦略や生産効率の点から弱い立場にある.そこで本研究では,受注戦略を有利にし高いコストパフォーマンスが得られる生産管理運用技術および生産システム構築技術の開発を行う.平成11年度は,「金型生産の納期短縮を行うスケジューリング法の開発」に関し,(1)金型企業がスケジューリングを行う場合に考慮すべき制約の調査,(2)スケジューリングシステムの構築,(3)最短納期を実現するスケジューリングアルゴリズムと加工納期設定法の考案と評価を行った. 企業調査の結果、一括組立金型生産では,金型を構成する全部品の加工完了時刻をできるだけ揃えること,また,システムの制約として,機械台数および作業時間・稼働日を考慮すること、スケジューリング時に扱える金型数と部品数を50台,1000個以上とすることが明らかになった.また,多量の金型加工情報を入力するシステムが必要であり,スケジュール結果の可視化も必要であることが明らかになった.この結果,スケジューリングシステムは,金型情報作成サブシステム,PERT情報作成サブシステム,スケジューリングサブシステムの3システムで構築した.また,一括組立金型用の最短納期を実現するスケジューリング法として,修正工程納期と修正部品納期を用いたディスパッチングルールを開発し,従来のディスパッチングルールと性能を比較した.この結果,修正納期を用いたルールが部品加工メイクスパンを最小化することが明らかになった.さらに,各金型の部品加工メイクスパンとクリティカルパス部品加工時間の比に関する平均mと標準偏差σから,mとσはシステム内の機械稼働率の関数として与えられ,加工部品の加工納期係数κをκ=m+xσで与えると,金型の加工納期遅れ割合と加工納期係数の関係が近似的に推定可能になることを明らかにした.
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