本研究では、経営管理上発生する意思決定問題のうち、大規模データから、意思決定に有効な情報を得るための統計的方法論の開発を扱った。特に、大規模データに対する解析として最も必要性が高いと考えられる、データの自動層別を行うモデルとして樹形回帰モデルを取り上げ、本年度は、以下の点について推定手法の開発と評価を行なった。 1.加法的な変量の利用を許す一般化 各決定節での説明変量の目的変量への効果がそれ以下の部分木において共通であれば、線形回帰項として決定節に採用するモデルを昨年度、本研究において提案している。これについて、昨年の推定算法を改善し、交互作用効果の大きさを基準とした分岐変数の選択基準と、線形回帰を組み合わせた木の成長算法を提案した。また、この算法を実用に耐えるようなプログラムとして実装した。これにより、従来の樹形回帰モデルに比べ、単純な分岐で多様な効果を、任意の実際のデータに対して、推定することを可能とした。 2.実証データでの樹形回帰分析の応用 樹形回帰分析の応用として、介護保険制度の基礎となった統計モデルの解析過程を整理するとともに、関連した分析を行ない、提案方法の評価を行なった。 今後の課題としては、提案アルゴリズムの計算量の低減が挙げられる。計算量はモデルの複雑さとともに急速に増える。そこで、算法の検討とともに、推定結果の良さを失わないようなモデルクラスの制限方法も合わせて検討を進め、提案法を改良することが課題となる。
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