研究概要 |
本研究では、GISにおける空間データの複合利用に対応する方法論構築を目的として,空間データ重合における属性データ変換手法の評価を行っている.平成11年度には,主に属性データ変換手法の評価理論構築を実施した. まず,本年度前半に既存研究成果のレビューを行った.属性データ変換手法としては,単純法と呼ばれる一連の簡便な手法と,補助データ法と呼ばれる,多様なデータを組み合わせて変換精度の向上を図る手法の2つが主に用いられており,それらの適用範囲は地理学,公衆衛生学,人口学,都市工学など多岐に渡っている.変換精度の評価はここ10年間の間に相当程度,行われているが,それらは主に実証分析に頼っている.理論面からの分析は,画像解析,計算幾何の各分野において多少行われているものの,それらの多くは非常に単純なモデルに基づいており,そのままGISのデータに適用することは困難である. 続いて,空間統計と積分幾何を用い,属性データ変換手法の評価理論を構築した.ここでは,ポリゴン間の属性データ移転に焦点を当て,ポリゴンの持つ属性の値と,ポリゴン相互の位置関係がランダムに決定されるという前提のもと,属性データ変換時に発生する誤差の期待値と分散と導出するための手法を開発した.変換手法には,1)面積按分法,2)代表点内包法,3)カーネル法,4)補助データ法の4つを取りあげ,それぞれについて変換精度の評価式を導出している.これらの評価式は,いずれも計算に積分を含んでいるため,効率的な数値積分のためのアルゴリズムを併せて開発した.
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