研究概要 |
サプライチェーンは過渡の競争を防ぎ,全体の最適化を目指した経営の概念である.そのためには川上段階が川下段階の情報を共有することが大切であることが広く認知されており,CRPやVMIなど様様なサプライチェーンマネジメントの手法が提案されている.しかし,いままでの研究では一つの販売店が複数の小売を持つ場合の情報共有効果に関する研究はなかったので,本年度は「分枝型在庫システムにおける情報共有効果について」(経営情報学会誌)の研究を行い,分枝型では販売店における情報共有の効果が小売の数が増えるにつれて相対的に小さくなることを発見した.一方,小売における安全在庫を販売店でまとめて持つ場合にはポートフォリオ効果を享受することができ,配送費用などを考慮して一つの在庫補充期間中に1回の配分しか許さない場合における配分時期と配分の量を順序統計量を用いて決める方法を提案し,「順序統計量を用いた在庫偏在の推定と改善」というタイトルで経営情報学会99年度秋季大会にて発表を行った.また,サプライチェーンの能力はその俊敏性により評価され,俊敏性を高めるためには需要に対する予測,および需要の予測情報の有効利用が必要であり,需要予測に着いては「Demand Forecasting and Responsive Supply Chain Model」というタイトルで第2回APCIEM会議で発表を行い,需要予測情報の有効利用については「革新的製品と瞬時対応型サプライチェーンモデル」に関する研究を行い,2000年4月号の経営工学会誌に掲載される予定である.情報共有や集中意思決定を行うPUSH型はシステム全体の効率をあげる効果がある反面,サプライチェーン上のインセンティブを損なったり,競争を否定する側面を持ったりするために,ここ1,2年間独立意思決定に関する研究が多く行われ,サプライチェーン取引関係の設計問題分野として脚光を浴びるようになっている.生産システムだけに着目した場合にはQCDの問題が発生し,そのうち納期について研究を行った.その結果は「納期延期を伴う需要の生産方式選択問題」および「発注納期より確定納期が遅れる取引のPush/Pull型生産在庫」の二つの論文にまとめ,経営工学会誌に掲載されている.
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