研究概要 |
本年度は、近年サプライチェーンが注目浴びるようになった背景に製品ライフサイクルの短縮化があることに着目し、需要が急に立ち上がって3〜6ヶ月で市場から消えていく商品を革新的製品として「革新的製品と瞬時対応型サプライチェーンモデル」日本経営工学会誌,50(6),pp.417-423(2000))に関する研究を行った。その結果、需要予測の情報を川上段階で共有し、在庫補充の意思決定に用いることにより製品の成長期においては生産のアクセラレーターの役割を持たせ、衰退期のおいては生産ブレーキの役割を持たせることができることを示した。また、需要予測モデルについて時系列分析法、回帰分析法、およびニューロンネットワーク法について比較を行い、いずれも予測誤差があること、また、いずれもプロモーションによる不規則的なトレンド変化に対してパラメータ調整が難しいことに着目し、それより単純な予測方法を用いても予測誤差のバイアスを在庫の意思決定に用いることにより欠品率を大きく削減することができることを論文「需要予測誤差を用いた安全在庫の計算方法」(日本経営工学会誌,51(4),pp.372-379(2000))で示した。さらに、多期間在庫問題と多期間配送計画を統合した最適化モデルを構築し、実用的な解法を開発するためには多期間配送計画問題を効率よく解くアルゴリズムを構築することにより、二つのNPハード問題の統合を試みた。多期間配送計画問題を効率よく解くためには高速でよりよいTSPの解が出せるアルゴリズムが必要になり、SFC(Space Filling Curve)ヒューリスティックスの高速性をベースに、解の質を改善する方法を二つ提案し、それぞれ10%近く質を改善した。これらの研究結果は、「Improving SFC Heuristic for TSP」,「A Hybrid Space Filling Curve Heuristic with 2-opt for TSP」と題し、それぞれアジア経営工学国際会議(APCIEM)および日中経営工学国際会議(ISIM)で発表した。さらに、近年インターネットの普及によりB2CやB2Bが増えることを踏まえ、顧客が市場で品物を探し回る行動、すなわち、マーケットサーチの概念を前提としたときのサプライチェーンマネジメントについて研究を行い、「マーケットサーチが物流在庫システムに与える影響分析」と題し、日本OR学会の秋大会で発表した。この他にも、川上情報を川下で共有するときのシステム運営効率の向上、2段階サプライチェーンを対象に最適な在庫補充量や時期をダイナミックに決める手法、QR戦略の本質と今後の発展などについて研究を行い、グローバルサプライチェーンの構築に向けて、需要予測、在庫管理、配送計画の3方面からそれぞれ独立なモデルや方法を提案し、来年度の統合モデルの構築と実用化のための準備を完了した。
|