当該期間に完了した5つの論文の概要を記す。先ず、最初の論文ではDEAによる規模の収穫性が、非芯的なweight restrictionを付加することによって変化することを示し、それを判定するための新しい方法を開発した。このことにより、規模の収穫性がより現実的な枠組みの下で判定できるようになった。次に2番目の論文ではDEAにおける非効率的なDMUを効率的フロンティアに射影する方法について論じた。グローバリゼーションの下で、効率性を一様に論じることには地域的はハンディキャップを考慮した場合無理があることは多くの研究者によって指摘されていることである。この論文では、先ず、グローバルに非効率性を測定した後で、ローカルなフロンティアに割り戻すという新しい方法を提案した。3番目の論文では、著者が開発したSBMに基づくSuper-efficiencyの計測方法を示し、従来用いられている方法と比較して、提案した方法の優位性を理論と実証の両面から立証した。この論文は今回の研究の主要な成果の一つである。4番目の論文では、首都機能移転の候補地選定にAHPとDEAを適用したケーススタディである。ここでも単純なDEAだけでは候補地の優劣の判定が困難であるので非芯的なweight restrictionを採用している。又、各候補地の優れた点と劣った点をDEAにより評価し、その両面から総合評価するための新しい方法を提案した。このプロジェクトは国土庁(現国土交通省)が主体となって推進しているが、候補地評価の方法論を中心にまとめたものである。5番目の論文では、NTTの電話料金自由化のための上限価格を決める方法について論じた。NTTのコスト非効率性をDEAによって計測し、非効率を除去することによって、料金をどの程度まで下げることができるかを算定した。その際、NTT自身の経営改善案をDEAによって評価し、上限価格算定のための参考にした。このプロジェクトは郵政省電気通信局において行われたが、DEAによる非効率計測に主眼を置いて作成した論文である。
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