研究は動向把握、実態把握、理論構築の3面から実施した。動向把握で主として利用した総務庁「科学技術研究調査報告書」から、研究開発アウトソーシングの動向を把握した。分析から、次のような結果を得た。 1.民間の研究開発アウトソーシングは今後とも増加する。 2.外国をパートナーにした民間の研究開発アウトソーシングは今後とも拡大する。 3.研究開発のアウトソーシングを担う人材の育成が急務である。 4.国内大学をパートナーにした研究開発アウトソーシングを拡大する必要がある。 5.民間の研究開発アウトソーシングは今後高度化し、多様化する。 次に、事例研究では、いくつかの典型企業を調査して、以下の結果を得た。 1.いくつかの企業では経営戦略と技術戦略の統合が明らかになっていない。研究開発アウトソーシングの位置付けも曖昧である。 2.ネットワークを活用したアウトソーシングの萌芽が見える。研究開発の進行管理にネットワークを利用している例がある。 3.先端企業では積極的にopen sourceを実施し始めている。外資系に多く、技術先端的企業である。 4.事例研究の対象の一つとしたプレイ・ステーション2は典型的な研究開発アウトソーシングの実例であり、研究開発アウトソーシングの理論を構築する手がかりを得た。 5.全体的に我が国の研究開発のアウトソーシングは萌芽期である。 理路構築では、動向分析、事例研究及び既存の理論を踏まえて、以下のような成果を得た。 1.既存のmake or buy論を超えて、make & buy論の妥当性を明らかにした。 2.取引コスト論は理論として有効ではあるが、実際的ではない。 3.モジュール論、緩いカップリング論に関しては、研究開発アウトソーシング戦略の強い要請から独自のモジュール化とその緩やかなカップリングを決定している。 4.企業の戦略を第一要因に位置づけた戦略の理論化が必要である。 5.戦略においてtimingは最重要事項である。timingを主軸にした理論構築が必要と思われる。
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