本研究では、サプライ・チェーンにおいて、顧客の需要情報の共有化がサプライ・チェーンを構成する企業にどのような影響を与えているかを解析することを目的として検討を行った。顧客の需要量や調達期間の不確実性により、販売から生産に至るまでの発注量が増幅してしまうというムチの効果(Bullwhip Effect)が指摘されており、このムチの効果によって、川上の企業は在庫量の増加や生産量の変動により誤った方向に導かれてしまう。現在、ムチの効果の対策の1つに、情報の共有化ということが挙げられている。そこで、ムチの効果についてのアプローチを行った。次にサプライ・チェーンを構成する個々の要素間で、実際どのような情報がどこでどのように利用され、どのような効果をどれくらい上げているかということについては示されていない。そこで本研究では、個々の要素間において需要、在庫、調達期間などの情報を共有した場合およびそれらの情報を共有しない場合についての種々の解析を行い、シミュレーション実験により以下の仮説の検証を行う。 〔仮説1〕情報の共有化がムチの効果の低減に有効である 〔仮説2〕情報の共有化は在庫低減に有効である 〔仮説3〕需要および在庫、もしくは調達期間といういずれかの情報のみを共有した場合、一方は他方よりも有効である シミュレーションの結果、それぞれの仮説を検証することができ、情報の共有化はサプライ・チェーンに有効であることが明らかになった。 次年度は、さらにモデルを現実のサプライ・チェーンに適合させ、サプライ・チェーンの情報共有化のメリットについて研究を行う。
|