本研究はサプライ・チェーンにおける情報共有化の有効性を検討することを目的としている。昨年度は、情報共有化の有効性及び情報のプライオリティーを明らかにすることができた。本年度は、複数の企業が競合しているサプライ・チェーンをモデル化し、このような状況下で情報共有の影響を検討することを目的として、Multi-supplier、Multi-retailerモデルにおける需要情報、調達期間などの情報がサプライ・チェーン全体にどのような影響を与えるかについて解析を行った。 まず、Multi-supplier、Multi-retailerモデルとして、販売店2-生産者1-供給者2の3段階サプライ・チェーン・モデルを構築し、このモデルにおける情報共有化の方法を検討した。ここでは、情報をどのように入手するかなどの問題点について、ゲーム理論的な方法を適用した。情報共有化の既往の研究では、販売店1-生産者1-供給者1の3段階のモデルや2段階の販売店2-生産者1のモデルを用いた報告はあったが、本研究で構築したモデルは複数の企業が競合したサプライ・チェーンを表現したものであり、現実に近いモデルを構築することができた。 次に、シミュレーションによる情報の価値に関する検討を行った。その結果、複数の企業が競合したサプライ・チェーンにおいても情報共有は有効である事を明らかにした。本研究の結果よりサプライ・チェーン・マネジメントにおいて、需要情報やリードタイム情報等をチェーンを構成する企業に共有させることが、サプライ・チェーン全体の最適化を図ることができることが判明した。
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