本研究の目的はサプライ・チェーンにおける情報共有化の有効性を検討することであり、2年間にわたって研究を行い以下の成果を得ることができた。 平成11年度は1サプライ・チェーン構成する個々の要素間において需要、在庫、調達期間などの情報共有化の有効性を検討するために情報共有化の仮説を3種類設定し、その仮説の検証を行った。 [仮説1]情報の共有化はムチの効果の提言に有効である。 [仮説2]情報の共有化は在庫低減に有効である。 [仮説3]需要、在庫、調達期間という情報には、サプライ・チェーンにとって優先順位がある。 シミュレーション実験により、それぞれの仮説を検証することができ、情報のプライオリティーを明らかにすることができた。 平成12年度は、複数の企業が競合しているサプライ・チェーンをモデル化し、このような状況下で情報共有の影響を検討することを目的として、Multi-supplier、Multi-retailerモデルにおける需要情報、調達期間などの情報がサプライ・チェーン全体にどのような影響を与えるかについて解析を行った。 まず、Multi-supplier、Multi-retailerモデルとして、販売店2-生産者1-供給者2の3段階サプライ・チェーン・モデルを構築し、このモデルにおける情報共有化の方法を検討した。ここでは、情報をどのように入手するかなどの問題点について、ゲーム理論的な方法を適用した。情報共有化の既往の研究では、販売店1-生産者1-供給者1の3段階のモデルや2段階の販売店2-生産者1のモデルを用いた報告はあったが、本研究で構築したモデルは複数の企業が競合したサプライ・チェーンを表現したものであり、現実に近いモデルを構築することができた。 次に、シミュレーションによる情報の価値に関する検討を行った。その結果、複数の企業が競合したサプライ・チェーンにおいても情報共有は有効である事を明らかにした。本研究の結果よりサプライ・チェーン・マネジメントにおいて、需要情報やリードタイム情報等チェーンを構成する企業に共有させることが、サプライ・チェーン全体の最適化を図ることができることが判明した。
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