本研究では、ロット化と平準化を考慮した生産の計画をスケジューリングという観点から検討した。すなわち、ロット化と平準化を考慮した生産計画という問題の明確化と概念的・論理的整理を行い、それらの一般的枠組みを構築し、生産現場においてロット化・平準化の融合(妥協)が生産の順序決定、すなわちスケジューリングにいかなる問題を投げかけるかを多角的に検討した。ロット化が欧米主導のMRP流の計画方法、平準化が日本型のJIT流の計画方法の基本理念であること、我が国の実際の生産現場に両者の融合形態が多いことに着目して、多品種生産環境におけるロット化・平準化を同時に考慮した生産の計画をロットの大きさや生産順序という観点から調べた。 自動車工場の事例では、ロット化が要求される塗装工程と平準化が要求される組立工程から成る生産ラインを対象に、投入順序がラインの中で変わらない(つまり、ラインがバランスしていれば、在庫として滞留することがない)という前提の下で、最適な投入順序を決定する問題を取り上げた。これに対して、数理計画法(整数計画法)に基づく投入順序決定法を開発した。この方法では、まず、組立の「車種」平準化を達成する投入順序「パターン」を定め、このパターンにしたがう投入順序の中で塗装工程における色の切り替えを最小化する投入順序を整数計画で定式化して解くものである。計算実験によって提案する方法の性能を評価し、方法の実用性を検討した。 また、ロット化の生産を行う場合の基本的問題であるロットスケジューリング問題に関して、複数並列機械環境におけるロットスケジューリング問題を取り上げ、列生成法に基づく解法を構築し、ラグランジュ緩和に基づく解法との比較検討を行った。さらに、ジョブショップスケジューリング問題に対して、作業の先行関係制約を緩和して機械ごとに分解される子問題を扱うラグランジュ緩和アプローチ(「機械分解」アプローチ)に基づく解法を構築し、計算実験によってその性能を評価し、従来型の「ジョブ分解」アプローチとの性能の比較を行った。
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