生存可能システムの理論的基礎付け作業と応用への準備作業を行った。(1)理論的基礎付け作業とは、S.Beerが一度は採用し後に否定した神経系からの租借モデルである生存可能システムモデルに、必然的な理論的基礎を与えるということである。Beerは幾度か、生存可能システムモデルは生物学的神経系モデルというより、H.R.MaturanaとF.J.Varelaの提唱するオートボイエーシス的性質を満たすべきであると述べてきた。しかしその内容は明かされていなかった。そこで我々は、生存可能システムはオートボイエーシス・システムであることを念頭に、その性質を再考した。その結果、創出される構成要素とは役割とコミュニケーションであること、組織とはアイデンティティーと構造を持ち、前者はシステム5が司どり後者については構造的には閉じてはいても情報とエネルギーは透過し得ること、サブシステム間の相互作用の形態を関係と呼ぶこと等、生存可能システムはオートポイエーシス・システムそのものであることが明らかになった。このことは3月4日から同11日までのイギリスでの討論会でも確認された。同会議では、共同研究者のR.Espejo教授より、組織潜在力からの効率性判定のための方法であるCyberfilterも教えて戴いた。(2)応用への準備作業とは、昨年2度行なった北海道での現地調査を指している。古い営業報告書数点と昭和45年当時の道南バス内部討議資料等を得ることができた。これを基に時系列分析によって、隆盛期から没落期までの業績を辿ることができた。また倒産の一因と言われている道南観光の詳細なデータも得ることができた。また多くの証言も得ることができた。 以上より、各年度毎の効率性判定は素より、生存可能システムモデルの理論と実証分析の統合的研究に、1つの結論を得ることができるものと期待している。
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