研究概要 |
本年度は半正定値計画問題の解析プログラムを作成し,それをlog determinant関数を含む組合せ最適化問題の解法に適用することを試みた.応用例として取り上げた問題は,情報量基準AICを用いたグラフィカルモデル推定問題である。この推定に関連する最適化問題は,標本分散共分散行列Sが与えられた時に,正定対称行列Xの非ゼロパターンを適当に定めて,対応するモデルのAIC argmin_XTr[SX]-log detX+κ を最小化するというものである.ここで,κはXの非対角非ゼロ要素の数である.ある非ゼロパターンに対してAICの値を求めるのに上記の凸計画問題を解く必要がある.この凸計画問題は,半正定値計画法のアルゴリズムを利用して効率良く解くことができる.Xが正定対称行列であることを考慮すると,対角要素は常に正であるため,考え得るXの非ゼロパターンは2^<n(n-1)/2>個程度ある.したがって,AIC最小モデルを素朴な数えあげによって求めるためには2^<n(n-1)/2>個の凸計画問題を解かなくてはならない. この問題の解法に対して種々のメタヒューリスティックスを比較し,n=10程度であれば,どのような方法でも得られる最適値に大きな差がないことを確かめた.また,分枝限定法を考案し,n=8程度までならば最適解を求めることができることが分かった.さらに,ブートストラップなどの計算統計学的手法も採り入れて,実際に統計的推論を行うことを試みた.来年度は,本年度作成したプログラムを元に,より広いクラスの問題である,双線形行列不等式問題の解法などについても研究を進める予定である.
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