研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,半正定値計画問題を組合せ最適化手法と組み合わせて統計学におけるグラフィカルモデル推定問題に応用した.グラフィカルモデルは連続多変量データの項目間の本質的関係をグラフで表現する手法であり,多数の可能なグラフ構造から適切なものを推定することが重要である.推定において自動的にできるだけ多くのモデルを探索するための一つのアプローチとして,情報量規準を利用して最適なグラフを選ぶことを試みた.情報量規準を効率よく最適化するために半正定値計画法と組合せ最適化の手法を利用し,さらに,推定されたグラフ構造の安定性をブートストラップを利用して調べる手法を開発し,実際に日本の裁判官と弁護士の関係を表すデータに適用してその有効性を実証した. また,問題がブロック構造を有する場合にも利用可能な,より本格的な一般的半正定値計画問題に対する主双対内点法のプログラムを作成し,数百次元の行列の最適化を含む標準的ベンチマーク問題が解けることを確認した.来年度はこのプログラムを用い,制御などの分野に現れる,より難しい非凸半正定値計画問題や一般の半双線形行列方程式の解法に取り組む予定である. さらに,半正定値計画問題の特殊な場合である2次錐計画問題の解法プログラムを作成し,それを磁気浮上式列車の磁気シールドの最適設計に適用した結果,Pentium III 700MHzのパソコンで数万変数の問題を数分で解けることが確認された.数千変数の問題ならば2秒程度で解くこともできる.このプログラムをサブルーチンとして繰り返し呼ぶことで,より難しい非凸2次錐計画問題を効率良く解くことができると考えられる.
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