昨年度まで、半正定値計画問題に対する主双対内点法のグラフィカルモデル推定への主双対内点法の応用について、研究を進めてきた。これはグラフィカルモデルの最尤推定が、半正定値計画問題に対する中心曲線上の点を求めることに帰着することを利用したものである。本年度は統計の分野で用いられている反復射影法と主双対内点法を比較することを試み、節点が20以上の問題については主双対内点法の方が高速でありうるということを示した。 また、半正定値計画問題と密接な関係のある、対称錐上の線形計画問題とそれに対する多項式主双対内点法を、Euclidean Jordan Algebraの一般化であるJB Algebraを用いて拡張することを試みた。そして、このアプローチによって拡張によって多項式内点法が拡張可能な問題のクラスおよびアルゴリズムは本質的に2次錐計画問題の無限次元版およびそれに対する主双対内点法であることを明らかにした。 さらに、半正定値計画問題の特殊な場合である2次錐計画問題の応用としてこれまで研究を進めてきた磁気シールド設計問題について、2次錐計画法を用いたロバスト最適化のアルゴリズムを考案し、実装してその有効性を明らかにした。ロバスト最適化はモデルに含まれる誤差を考慮した上で、min-max的な最適解を求めるものである。実装に当たっては昨年度までに作成した2次錐計画問題のプログラムを改良して用いた。 その他、関連する研究として、線形計画問題に対する、計算複雑度が係数行列のみに依存する多項式主双対内点法の研究を行い、基本的アルゴリズムである、Vavasis-Yeのアルゴリズムを改良した。これらの研究成果の一部を含めた、内点法に関する教科書を執筆した。
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