本年度は、日本国内における防災型土地利用規制の導入実態を把握するために、全国694の全市及び東京都特別区の防災部局・都市計画部局に対して、2種類の調査票を作成して郵送法によるアンケート調査を実施した。本報告の時点(3月初め)までに、両部局とも6割前後の回答を得ている(一部の市については、再度協力を依頼中である)。回答内容は、購入したパソコンを用いてデータベース化をしている。 以上の調査を通じて、「地域防災計画の改訂」と「都市計画マスタープランの策定」の全国的経過を把握することができた。特に、防災部局の組織構成・予算規模に大きな格差が存在すること、計画過程への住民参加や計画案の公表にも温度差があること、必ずしも防災政策と都市計画の両者の整合性がとり切れていないこと、などが確認されつつある。今後は、この両者がどのように対応づけられているのか、筆者らが提唱する防災型土地利用規制がそれぞれの計画案にどのように反映されているのか、具体の土地利用計画で防災対策への配慮がどの程度行われているのか、という視点を中心に解析作業を深化させていきたい。 第2に、トルコ・台湾での地震の影響もあり、国土庁が活断層を考慮した土地利用規制に関する私的研究会を発足させるなど、改めて防災型土地利用規制を巡る動きが現れており、アンケートヘの自由回答等も参考にしつつ、来年度に実施する現地調査・ヒヤリングの対象地域をリストアップしている。以上の研究成果の中間報告として、雑誌『地形』へ論文を投稿するとともに、日本地理学会秋季大会において研究発表を行った。
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