研究概要 |
プレート境界カップリング域先端付近の挙動を調べるために,この周辺に発生している地震クラスターについて詳細な解析を行った.その結果,釜石沖約10kmの深さ約50kmに存在している地震クラスターでは,少なくとも1957年以降,気象庁マグニチュードでM4.8+-0.1の地震が5.35+-0.53年間隔で発生していることが判明した.これらの「固有地震」には余震がほとんどなく,再来間隔の半分あたりからクラスター内の微小地震活動が徐々に活発になり,次の地震に至るという非常に特徴的なパターンを示している.この傾向はバネ-スライダーモデルによるシミュレーションや,time-to-failureモデルの性質に極めて似ている. クラスターに含まれる微小地震の詳細な震源再決定と,「固有地震」のコーナー周波数の解析により,この「固有地震」の大きさは約1km程度と見積もられた.unilateralな破壊を仮定して地震モーメントとの関係から推定されたすべり量を平均再来間隔で割った値は,この地域のプレートの収束速度と同程度であり,このことはこのクラスターにおけるプレート間の地震カップリングが100%近いことを示唆している. もし,アスペリティが100%カップリングしており,そのまわりが非地震性すべりのみを起こしている領域であるならば,このようなアスペリティでは固有地震的に地震が発生することが理論から予測されており,観測事実と調和する.したがって,釜石のすぐ沖では非地震性すべりが卓越しており,小さなアスペリティのみで100%カップリングしているというモデルが考えられる.これが正しければ釜石のすぐ沖では将来にわたっても大きな地震は派生できないということになる. このクラスターが本当に固有地震的な性質を持つのであれば,次の地震は2000年7月+-半年に発生することが予想される.
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