研究概要 |
本研究では,平成11年度における解析により,釜石沖にM4.8の地震が5.35±0.53年の再来間隔で固有地震的に発生していることを明らかにした.この地震群は波形の相似性が高いため,このような固有地震的な活動を抽出するには波形の相似性の高い地震を探せばよいことになる.このような観点から,平成12年度には相似地震解析を行った.ここでは,相関係数が0.95以上の地震を「相似地震」と呼ぶことにする. 得られた相似地震は,GPSデータ解析から得られている固着状況の強い領域の内部には存在せず,その周辺を縁取るように分布している.また,過去に発生した大地震の震源域の内部にもほとんど存在しない.さらに,プレート内部には相似地震はほとんど見られない.これらのことから,プレート境界では,ごく小さなアスペリティが多数存在しており,これが繰り返し破壊することによって相似地震が発生していると考えられる. 上記の解釈からプレート間のすべり速度を見積もったところ,大局的には太平洋の沈み込み速度と同程度の値が得られたが,青森県のすぐ沖では20cm/年を越える大きなすべり速度領域が見つかった.このことはGPS解析の結果と調和的であることから,この手法を用いてGPSよりも高分解能で固着状況の推定ができる見通しが立った. 相似地震活動は大きく分けて,余震や群発地震活動にのみ見られる「バーストタイプ」と,定常的に見られる「バックグラウンドタイプ」の2種類が存在する.プレート境界カップリング域先端付近においては,「バックグラウンドタイプ」が顕著であり,このことはこの付近の固着状況が弱く,小さなアスペリティのみで固着していること示していると考えられる.
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