研究概要 |
本研究では,平成11年度における解析により,釜石沖にM4.8±0.1の地震が平均再来間隔5.35年(標準偏差0.53年)で繰り返し発生してきていることを明らかにした.次の地震は99%の集積確率で,2001年(平成13年)の11月末までに発生すると予測されていたが,実際に2001年11月13日に,M4.7(気象庁暫定マグニチュード)の地震が発生した.この地震の位置,メカニズム解,規模とも過去の地震とほぼ同一であった. 広帯域地震観測波形の解析により,1995年と2001年の地震は破壊の開始点こそ数百m異なるものの,モーメント解放量分布がほとんど同一であることが判明した.これは,「非地震性すべりを生じる領域の中に小さなアスペリティがあり,それが繰り返し破壊することによって固有地震的な挙動を示す」という当初の仮説の正しさを裏付ける極めて重大な成果である. 1995年と2001年の地震の間の期間はこれまでで最も長く,逆に1990年と1995年の地震の間は最も短い.このような再来間隔の揺らぎがあるものの,地震のサイズは毎回一定である.1995年の地震の前に1994年三陸はるか沖地震が発生しており,その余効すべりがこの釜石沖まで及んでいたことが他の研究から明らかになっており、1995年の地震の発生が早まったのは、この余効すべりの影響と考えられる.1995年と2001年の地震の間隔が長かったことは,この期間に,アスペリティの周りにおける非地震性のすべりのレートが遅かったことを示唆している.つまり,平均的なプレート間相対変位速度が一定となるよう,1994年三陸はるか沖地震の余効すべりで加速された分が,その後,減速することによって補償されたことを意味している。このような性質が一般に成り立つのであれば,次の地震発生時期の予測は,単純な更新モデルよりも精度を向上させることができることになる.
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