研究概要 |
昨年度までの成果から,相似地震解析によりプレート境界の準静的すべりの時空間変化が推定できることが明らかになっている.しかしながら,単一のグループのデータのみでは信頼度は低い.そこで,本年度は各相似地震グループから計算された積算すべり量を地域的に隣接した相似地震グループについてスタックすることにより,準静的すべりの時空間分布を高信頼度で求めた.1994年三陸はるか沖地震の余効すべりについてこの手法を適用した結果,震源域の西側については,GPSデータ解析から求められた余効すべり分布と良い一致を示す分布が得られ,この手法の正当性を示すことができた.一方,GPS観測点は陸上にしかないため,海溝近傍となる震源域の東側については,GPS観測では余効すべり分布を推定することは困難であるが,相似地震解析では,震源域の東側でも余効すべりを検知することができた.これはGPSデータ解析に対する本手法の優位性を示すものである. この手法を東北地方東方沖全域に適用した結果,この地域で1984年以降に発生したM6以上の地震はすべて顕著な余効すべりを伴っていることがわかった.また,群発地震時には準静的すべりが大規模に生じており,最大地震よりも前から頭著な準静的すべりが見られる.このことから,「地震の発生に伴って余効すべりが生じ,その余効すべりが近傍の地震の発生を引き起こす」という,群発地震の連鎖反応モデルが構築された. 全地震発生数に対する相似地震の発生割合を調べた結果,海溝軸近傍と海岸線付近では相似地震の発生割合が高く,その間では発生割合が低いことがわかった.このことは,海洋性プレートが海溝から沈み込んだ直後はプレート境界におけるカップリングは弱いが,プレートが沈み込むにつれてしだいに強くなり,海岸線付近にくると高温のためにまたカップリングが弱くなるという,計画当初の仮説の正しさを裏付けるものである.
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