水底・海辺堆積物に見られる地震および津波痕跡の研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11680466
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 都司 嘉宣 東京大学, 地震研究所, 助教授 (30183479)
• 研究分担者: 志岐 常正 立命館大学, 経営学部, 講師 (10025265) ; 山崎 貞治 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80030360) ; 岡村 眞 高知大学, 理学部, 教授 (10112385) ; 西村 裕一 北海道大学, 理学部, 助手 (20208226)
• キーワード: 東海地方の津波 / 湖底堆積物 / 津波の地質痕跡 / 明応地震(1498)の津波 / 知多半島の津波痕跡 / KT境界 / 紀伊半島の津波 / 尾鷲市の津波災害

研究概要

平成11年の浜名湖湖底の堆積物調査に引き続き、歴史時代・先史時代の東海地震による津波痕跡を検証するため、平成12年7月に、三重県尾鷲市須賀利浦の大池と海山町船越池、および大白池の湖底堆積物のピストンコア採取を行った。大池は、人里はなれた東西1km弱の小さな潟湖で、東西に自然堤防をへだてて海への開口部があり、ほぼ津波以外の理由で外洋海水の浸入はない。東側開口部付近で採取したサンプリングコアから、AD1297±40年、AD1023±40年、AD695〜772年の3つの歴史時代の津波痕跡を検出し、それぞれ正平南海地震(1360)、嘉保東海地震(1096)、白鳳南海地震(684)、またはそれらとベアをなす東海地震による津波痕跡と推定される。このほか先史時代の5個の津波事例を検出し、最古の津波は2480±40年BPの年代を示した。
パプアニューギニア国ラバウル港は近年の火山活動に伴う津波を経験している。またSissano潟湖は1998年に大きな津波に襲われた。これらの津波の堆積物を調査した。北海道噴火湾、および苫小牧付近の海岸で、1640年北海道駒ヶ岳の噴火にともなう津波の堆積痕跡を検出した。
愛知県知多半島の先端部、内海町礫浦の海岸では、砂岩と化した地層中に津波痕跡が見られる。本研究では、津波痕跡が見られる礫浦の磯海岸の航空写真撮影とそれに基づく詳細地図と、地層のスケッチを作成した。1万年以上前の津波痕跡である。湖内津波の堆積物の研究として、琵琶湖の湖底堆積物の調査も行った。
なお、2000年8月に東北大学工学部において災害制御センター主催で津波堆積物に関する国際研究集会が開催され、本研究に基づく5題の研究発表を行った。

研究成果

• [文献書誌] 岡村眞,松岡裕美,都司嘉宣: "沿岸湖沼堆積物による過去1万年の地殻変動と歴史津波モニタリング,"月刊地球. 号外28. 162-168 (2000)
• [文献書誌] 山崎貞治,志岐常正,: "知多半島中新統のSeismite,Tsunamiiteに伴う三種類の砕屑岩岩脈"日本地質学会関西支部報. 126. 11-12 (2000)
• [文献書誌] 都司嘉宣: "南海地震とそれに伴う津波"月刊地球. 号外24. 36-49 (1999)
• [文献書誌] Shiki,T., et al.: "Sedimentary features of the seismo-turbidite, Lake Biwa, Japan,"Sedimentary Geology,. 135,104. 1-4 (2000)
• [文献書誌] Shiki T.,M.B.Cito,D.S.Gorsline,: "Sedimentary features of seismites, seismo-turbidites,"Sedimentary Geology,. 135,104. 7-9 (2000)
• [文献書誌] Nishimura,Y.,Miyaji,N.: "Behavior of Historic Tsunamis of Volcanic Origin as Revealed by Onshore Tsunami Deposits,"Physics of Chemistry of the Earth. 24. 985-989 (1999)