研究概要 |
GPS測量は測量釘1本の簡便な測点でも高精度の測量が可能である.近年開発されたリアルタイムキネマティック(RTK)-GPSを用いれば,従来の静止測量より短時間に多数の測点の測量が可能になり、斜面災害の前兆の微少な変位をとらえて、災害の予測に利用することも可能であり,「斜面定期健康診断」と呼ぶべきシステムが可能になる。本研究では、RTK-GPSを用いた斜面定期健康診断システム開発に必要な基礎研究を行い,以下の成果を得た. (1)24時間連続測位を行い安定性を調べた.標準偏差は3mmで,平均値の移動やジャンプは見られず,電源のオンオフ繰返し試験でも,測位座標が1cm程度以上ずれることは無く,RTK-GPSは高い安定性と信頼性を持つことがわかった.そこで,従来2時間必要な静止測量と同等の精度をRTK-GPSの1秒サンプリングで実現するために必要な時間(エポック数)を調べ,5分間(300エポック)で水平で3ミリ,上下で6ミリ程度の精度が得られ,5ミリ程度の移動量を観測可能であることがわかった. (2)高知県・怒田地すベり地の横断測線上に測点を設置し,5分間のRTK-GPS観測を繰返し行ったところ,傾斜地でも5分間の観測で標準偏差3ミリの精度が得られた.踏査,地形判読等から得られた小ブロック毎に移動方向を得ることが出来た.地すベり活動範囲の推定と、移動ベクトルの分布が可能であることから,RTK-GPSが地すベりブロック境界の推定や斜面定期健康診断に利用できることを示した。 (3)傾斜計とサーボモーターを用い,GPSアンテナを迅速かつ高精度に測点上に設置でき,軟弱地盤でも観測中にアンテナを高精度に保持可能な自動制御三脚を開発した。180cmの高さで水平位置1ミリ以内に保持することが可能である.大学構内と怒田地すベり地で試験し改良を加えた.さらに関西TLOを通してこの三脚の特許を出願した.
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