研究概要 |
今年度は,花崗岩および堆積岩の風化について以下の研究を行った. 1.花崗岩の風化に関する研究 これまで崩壊を多発してきた花崗岩は一般に数十m程度の深さまで深層風化しており,その内表層の厚さ1-2mの緩んだ部分が崩壊する場合が多い.この緩みの実態と形成メカニズムを明らかにするために,12年前に掘削された人工法面を対象にして法面掘削後の岩石の性質の変化を調べた.その結果,掘削前に風化の程度が小さかった岩石ほど掘削後急速に再風化したこと,この再風化は主に物理的な緩みであること,緩みはおそらく応力解放と乾湿繰り返しによって進行したことが明らかになった.また,この急速な再風化は明瞭なフロントを持つこと,このフロントよりも上の部分が降雨によって急速に飽和することが明らかになった.天然での風化花崗岩の崩壊は,こうした明瞭なフロントよりも上の物質が崩壊する場合が多く,本研究成果は,その形成メカニズム,および,それと崩壊との関連を示している. 2.堆積岩の風化に関する研究 堆積岩からなる山地のボーリングコア解析および掘削年の明らかな巣堀りトンネル壁の調査を行った.その結果,泥岩および砂岩ともに岩石中に含まれる黄鉄鉱が酸化して硫酸が形成されること,その硫酸が方解石などの鉱物を溶解して岩石を劣化させること,また,これらの反応に対応して特徴的な風化帯(酸化帯,溶解帯)が形成されることが普遍的にあることが明らかになった.天然には酸化帯下底付近にすべり面を持つ地すべりが多いことが経験的に知られており,上述の結果は,この風化帯構造の形成メカニズムを示している.さらに,素掘りトンネル壁での調査から,不飽和帯における上述の風化速度を明らかにし,また,この風化速度を酸化フロントでの化学反応,およびこのフロントまでの酸素の拡散によって説明することができた.
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