研究概要 |
今年度は花崗岩と凝灰岩の風化について以下の研究を行った. 1.花崗岩 平成11年6月に多数の崩壊が発生した広島の花崗岩の風化帯調査を行った結果,これらの崩壊には風化帯の構造が極めて重要な役割をしていることが明かとなった.すなわち,この花崗岩は,地表から深さ50m付近まで,応力解放によって厚さ1mmから2cmの薄いシートに割れており(マイクロシーティング),これらの薄いシート群が深さ1m程度まで著しくゆるみ,ゆるんだ部分が豪雨で崩壊したことが明かとなった. さらに,もう1つの花崗岩の代表的風化形態である球状風化について,その風化プロセスにおいて起こる現象を初めて定量的に明らかにすることができた.すなわち,もともと塊の花崗岩体が,割れ目沿いから次第に内部に向けて風化し,風化部が皮膜となって内側のコアから分離し,さらにマサ化する過程を,鉱物学的および化学的変化と物理的性質の変化として明確化した.このようにして球状風化した花崗岩は,豪雨によって崩壊し,球状の岩石部分が高い慣性力をもつため,移動経路にあるものを破壊してゆくことが想定される. 2.凝灰岩 代表的な凝灰岩の1つで,我が国などの変動帯に広く分布し,大雨によって崩壊を繰り返してきた火砕流堆積物の風化帯構造を明確にした.特に,毎年「人が死ななければ梅雨があけない」と言われる鹿児島県のシラス(非溶結火砕流堆積物)の風化帯が,特徴的な風化帯構造を持つことを初めて明確にした.すなわち,風化帯の下部にガラスがおそらく水和によって軟質になったゾーンがあり,その上にハロイサイトに富むゾーンがあること,そして,後者の上部にはハロイサイト濃集部が複数のバンドを形作っていることが一般的であることを明らかにした.
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