研究概要 |
本研究では,大気が土壌空隙を通して火山ガスに流入していることを問題提起し,さらにその物理的メカニズムを明らかにすることを目的としている.本年度は,〔1〕前年度までの観測においてデータが得られていなかった,九重硫黄山の1995年噴火口周辺域で新たに数点の試料採取およびデータ取得を行い,〔2〕地下における物理モデルの構築を行った. 〔1〕今回新たに得られたデータも,前年度までのデータと同様の傾向を示した.即ち,流量の多い噴気ほど,大気成分の混入率に敏感に応答するHe/Ar比が小さくなる(大気成分の混入率が高い)傾向をもつことが判明した. 〔2〕本研究で得られたデータから支持されるような大気流入が実際に生じるためには,火山ガスの上昇過程において,どのようなメカニズムが必要であるかを検討するために物理モデルを考察した.実際の火山ガスは,地中の礫などが積みかさなったような複雑な地下構造の中を上昇してくると考えられるが,簡単のため壁面が多孔質の材質で作られた円管内(擬似ガス流路)をガスが移動するような場合を考えた.このような擬似ガス流路モデルにおいて,レイノルズ数が高い(この場合流速が大きいと考えてよい)流れでは,境界層理論を適応させれば流体剥離域において吸い込みが起こることは流体力学的に確認されており,モデルで考えたような物理状態が火山ガスの上昇経路中に存在していれば,大気流入が生じることが示唆された.現在,このモデルを用いたシミュレーションを行っている.
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