平成12年度までに試作した東京南西部-横浜地域の災害予測図(ハザードマップ)を照査し、誤りの訂正や図的表現の統一と適正化、カテゴリー区分等についてチェックを行った。作成した予測図の範囲は、1/1万地形図に相当する4図幅(自由が丘、武蔵小杉、鶴見、新横浜)である。その結果、比較的大規模な谷埋め盛土に限定しても、不安定化素因を有する造成地が、大都市の内部に数多く存在することが明らかになった。特に、区分上の予測可能性Aランクの全部とBランクの一部は、阪神淡路大震災の経験から、将来の地震によって大きく変動する危険性は高いと予想される。したがって、AランクとBランクに分類される谷埋め盛土は、変動に関してScreen Positiveであると考えるべきであり、こうした地域については、早急により詳細な調査を行い、対策を講じる必要がある。また、作成した災害予測図は、1/1万スケールのもので、地形図の精度による制約から、抽出できた谷埋め盛土は比較的大規模で深いものに限られている点や人工構造物の影響も考慮されていない点などが、問題点として指摘できる。したがって今後は、より大縮尺の地形図を使用し、比較的小規模な盛土や人工構造物の分布を調査し、災害予測図に反映してゆくことが必要である。しかし一方、今回用いた方法によれば、極めて簡便に、そこそこの精度で危険度を推定することが可能であり、谷埋め盛土の面的な危険度評価を速やかに行うことができる。この点は、ポストモダン都市が直面している斜面災害の防御をはかるうえで、大きな寄与となると考えられる。
|