研究概要 |
プラズマが乱流状態になると、内部にはキャビトンと呼ばれる波束が多数できていると理論的には考えられている。しかしながら、実験でキャビトンを測定することは難しく、その3次元的な構造を明確に捕らえた例はない。当研究はキャビトン電場の測定を目的とし、電子ビームプローブ法の応用を行った。電子ビームプローブ法というのはプラズマ内部の電場を測定するのに使われる手法であり、ビームの偏向を測定して未知の電場を予想するものである。普通は、細く平行なプローブビームが用いられており、これまでは我々もこの方法で偏向角の大きさや偏向形態を測定しようと努力してきた。しかし、キャビトン電場以外の原因により偏向が生じた可能性があることが指摘されていた。この研究の初期においては測定自体の信頼性を高めるために,いくつかの新しい試みを装置に施している。これらはこれまでの技術的な問題点を解決したが,特にこれによって測定の感度を上げることができた。そこで、さらに新しい試みとして普通,誘電率の空問分布を測定するのに光学的に行われているシャドウグラフを、電子ビームを用いて試みた。電場の影絵を映してみること、つまり、偏向の空間分布の測定をすることを意味するが、これまでに電子ビームが用いられた例はまだなかった。結果はうまくいき、電子ビームのシャドーグラフを実現することに成功した。観測された偏向像には、特有な網目の構造が観測された。これは我々のプラズマの内部には(乱流電場で期待されるような)複雑な電場の空間分布があることを意味する。さらに編目の大きさがデバイ長の20倍程度の大きさを持つことが実験から示された。一方で、理論的解析を進めた結果、キャビトン電場による偏向は崩壊終盤のサイズの小さくなるときにしか得られないという新たな見解を示すことができた。これらは実験結果をうまく説明している。今後、研究を進めるうえで一つの方向性を示すことができた。
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