研究概要 |
本年度は,超短パルス電子ビームの生成と,それを用いた電磁波放射の確認を目指して研究を遂行した。まず,現有の大強度電子ビーム発生装置を用い,多段自動加速によりパルス幅の圧縮が可能であることを確認し,発表した。更にその多段自動加速装置を改良して,超放射実験に適したパラメーターを持つと考えられる電子ビームを生成した。従来の電子ビームに比べ,小半径の,半径5mm,エネルギー1MeV,電流1kA,パルス幅が0.8ナノ秒の電子ビームの取出に成功した。問題点としては,ビームエネルギーの増大が,期待していたものより少なかったことが挙げられるが,この原因は,ビーム電流波形の立ち上がり時間に起因しており,改善は可能と考えられるが、上に述べたビームパラメーターでも,本研究の遂行が可能であることから,この点の後の課題とした。次に,ビームの断面形状については,中空状の電極から中空状のビームを期待した。しかし,加速中の伝搬にともないビームの外径寸法は変化しないが,断面内部にほぼ一様に電子が分布してしまうという現象が起きた。このことは,放射機構を考えると,不利であると考えられる。またこの物理的原因もよくわかっていない。現在この点について機構解明を目指した実験を行うと同時に,磁場,加速管等の改良を検討中である。一方で,放射される電磁場の測定系の整備は,交付された研究費を用いてほぼ整い,現在検出器の較正を行っている。近いうちに,現状のビームからの放射電磁波の測定が可能である。
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