プラズマの密度分布測定法としてマイクロ波やミリ波帯の電磁波を使う反射計が再び注目されている。そのシステムにおいては掃引信号の周波数弁別能力で分解能が決まる。従来はこの部分にマイクロ波帯のフィルタバンクが用いられてきた。しかし、フィルタの数や特性(Q)に限界があり高い空間分解能は期待できなかった。そこで、この周波数分離の部分に時間・周波数分解能を持つ非定常スペクトル解析法を用いることを試みた。定常スペクトル解析法である「高速フーリエ変換法(FFT)」「最大エントロピー法(MEM)」、非定常スペクトル解析法である「ウィグナー分布」・「ウェーブレット変換」を用い、同一条件でそれら解析法の得失を比較・検討できるシミュレーションプログラムを製作・完成させ、実際の条件で比較を行った。その結果、高い時間・周波数分解能の特性からウィグナー分布が最も期待が持たれることが明らかになったが、反面、クロス項成分と呼ばれる偽のピークが発生する問題があり、それを何とかしないと実用にならないこともわかった。 そこで、さらにウィグナー分布のクロス項成分抑制法について検討を行い、分解能悪化を伴うことなくクロス項成分を抑制・除去する手法を新たに考案した。これは、一般的に適用可能なアルゴリズムではないが、ブロードなスペクトルではない複数の成分を持つ線スペクトルの場合に適用可能なアルゴリズムである。これを反射計のシミュレーションのウィグナー分布を用いたデータ解析に適用し、大幅に精度が改善される事を示した。又、単にシミュレーションばかりではなく、実際にマイクロ波帯のFM反射計を製作しそれを用いて実験を行い、実際の実験データのデータ解析にも適用可能であることを示すと同時にその有効性を確認した。 以上の成果を、プラズマ・核融合学会、電気学会等で報告した。又、非定常スペクトル解析法をデータ解析に適用した例をいくつか論文として発表した。反射計での実験結果やクロス項抑制法についても、学会誌に投稿中である。
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