研究課題/領域番号 |
11680483
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若谷 誠宏 京都大学, 大学院・エネルギー科学研究科, 教授 (00109357)
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研究分担者 |
浜口 智志 京都大学, 大学院・エネルギー科学研究科, 助教授 (60301826)
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キーワード | 磁気シアー / 速度シアー / 帯状流 / 負磁気シアー / 電子温度勾配ドリフト波 / ケルビン・ヘルムホルツ不安定性 / 異常輸送 / 逆カスケード |
研究概要 |
トカマクとステラレータに共通する現象として電子温度勾配ドリフト波乱流に着目し、ジャイロ粒子シミュレーションを行い、非線形飽和と帯状流(zonal flow)の形成に関する知見を得た。トカマクの負磁気シアー配位のように磁気シアーがゼロの面の両側に有限の磁気シアーの領域がある配位では、ゼロシアー面近傍に強い不安定性が成長する。この不安定性の非線形モード間結合により、磁気面内では逆カスケードが生じ長波長に揺動エネルギーが蓄積するが磁気面を横切る径方向には短波長モードに動揺エネルギーが流入し順カスケードが生じる。この結果、強い速度シアーを持つ帯状流が形成される。興味深いのは、このような帯状流は磁気シアーが有限の領域にのみ形成され、磁気シアーがゼロの面近傍には見られないことである。 電子温度勾配ドリフト波は電子の熱輸送に異常性をもたらすことが知られている。本研究では、速度シアーによる安定化が期待される帯状流領域では、このドリフト波は抑制され、異常輸送のレベルは低い。一方、磁気シアーが弱い帯状流がない領域では、電子の異常輸送が顕著である。つまり、負磁気シアー配位では、ゼロ磁気シアー面の両側に異常輸送が抑制された輸送障壁が見られるはずであるが、板状モデルをトーラスモデルに拡張すると、外側領域ではトロイダルモードが不安定になると考えられるので、最終的にはゼロ磁気シアー面の内側に輸送障壁が形成されるだろう。これは実験結果と対応している。 それでは、帯状流の安定性は何に依存するかを調べた結果、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性が本質的であることが見出された。速度シアーが大きくなると、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性が生じることはよく知られている。一方、磁気シアーはケルビン・ヘルムホルツモードを安定化する効果がある。つまり帯状流領域では、速度シアーは大きくなるが磁気シアーによりケルビン・ヘルムホルツモードは安定化される。その結果速度シアーによるドリフト波乱流の抑制が可能になる。これが本研究で示された異常輸送の物理的描像である。
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