前年度までに、Mgターゲットを用いたコンベンショナルなプレーマナグネトロン放電での反応性スパッタリング成膜過程を調査し、以下のことを明らかにしてきた。1)導入酸素流量に依存して、放電とスパッタ過程が、金属モードと酸化物モードに分かれる。2)導入酸素流量が少ない金属モードでは、ターゲット表面から主にMg原子が高収量でスパッタされ、供給したO_2はターゲットや壁に急速に吸着し、空間内には殆んど残存しない。3)他方、導入酸素流量が多い酸化物モードでは、ターゲット表面が酸化された状態で酸化物が低収量でスパッタされ、空間内の残留酸素圧力は極端に低下することがない。4)ターゲットでのスパッタプロセスと基板表面での酸化膜形成プロセスは密接に連動しており、その独立制御は困難である。5)結果的に、通常方式の反応性スパッタではMgOの高速成膜は困難である。 以上の研究結果をもとに、平成13年度は、そのための装置設計・製作・放電特性の評価を行った。具体的には、入念な装置設計を経て、容量結合を極力回避した内部アンテナ型誘導結合プラズマを生成し、その基本動作特性を電子密度、電子温度のプローブ測定および発光スペクトル計測を通して評価した。マグネトロン単独動作と、ICP単独動作、マグネトロンとICP併用動作における放電・発光特性を比較調査し、以下の結果を得た。 ●軸対称性の良好なICPの発生に成功し、プラズマパラメータの空間分布を把握した。 ●ICPはスパッタMg原子の励起・電離に有効であることが発光分光分析から確認できた。 ●ICPとプレーナマグネトロンを併用する際には、スパッタ量をマグネトロン放電電力で統一的に制御するといった注意が必要である。 反応性IPVDによるMgOの高速成膜の実現には、本プロセスの地道な解明が重要であり、マグネトロンとICPアンテナ間への遮蔽板の設置、酸素ガス供給部および基板ホルダーの設計製作、動作圧力、投入電力の最適化など今後やるべき課題が明確になった。
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