研究概要 |
1.はじめに レーザー核融合エネルギー開発用の、半導体レーザー励起高平均出力固体レーザーモジュールを開発するためには、熱効果(熱レンズ、熱屈折熱変形)の制御が不可欠となってきている。本研究では、熱効果解析コードを開発し、それを実験と比較して改良し、上記モジュール開発に寄与することを目的とした。 2.DPSSLドライバーモジュールの設計・試作・評価 レーザー核融合炉用DPSSL(Diode Pumped Solid-State Laser,半導体レーザー励起固体レーザー)ドライバーモジュールとして、最小出力エネギー(10J×10Hz)のHALNA(High Average-power Laser for Nuclear-fusion Application)-10DPSSLを設計した。このHALNADPSSLの励起用として有用な噴流水冷LDアレイを新たに開発し、さらに、LDアレイの熱効果を評価する手法を明らかにした。一方、IFE(Inertial Fusion Energy)用のみならず産業用にも使用可能な、平均出力100W級のDPSSLも開発した。試作したHALNA10の出力特性を詳細に測定し、理論値と良く一致することを示した。しかし、10Hzの動作を実現するためには、特に熱レンズ効果を補償する必要があることを明らかにした。ところで、熱複屈折の補償のために、4分の1波長板が平均出力10W以下のDPSSLに有効であることを示した。そして、熱複屈折の2次元分布を測定可能なポラリメーターを新たに開発した。改良した3次元熱効果解析コード(テスラック)を開発し、実験結果を良く説明することを示した。 3.HALNA-10〜20DPSSLの設計 HALNA-10〜20DPSSL(10J〜20J×10Hz)をテスラックコードで設計し、レーザー増幅器出力として10J〜20Jを達成可能なことを示した。 4.ファラデー旋光子とポッケルスセルの熱複屈折効果制御 通常のファラデー旋光子に100W〜1kWの1053-mmレーザー光を通過させると、熱複屈折損失が10%以上に達することを予備的に示した。また、ポッケルスセルに100W級のレーザー光を通した際に発生する熱複屈折効果を、90度石英旋光子でほぼ補正できることを示した。 5.おわりに HALNA-10DPSSLに出現する熱効果を測定し、補償可能なことを示したので、今後HALNA10〜20を確実に10Hzで動作できる見通しを得た。本研究で開発できたテスラックコードは、今後各種の高平均出力DPSSLにも適用可能であり、産業用DPSSL開発にも有用であると考えられる。
|