研究概要 |
本研究は,太陽光発電技術において、コストの低減と省資源の点から将来的に有望視されているシリコン薄膜型太陽電池の高効率化を実現するため,光学的・電気的特性の優れた微結晶シリコン薄膜を製作することを目的とする。その手法として、水素ガスのマイクロ波励起によって生成される高密度水素ラジカル(原子状水素)の膜成長表面へ効果を積極的に利用することを特徴とする。 今年度は,まずマイクロ波水素プラズマの特徴を明らかにするため,白金線を用いた水素ラジカル密度検出法及びラングミュアプローブ法によるプラズマ状態の測定を行なった。その結果,チャンバー内のガス圧力の上昇によって,水素ラジカル密度が減少すること,及びイオン密度,電子密度と相関があることが確かめられた。 微結晶シリコン薄膜における結晶の成長過程について検証するため,結晶性と電気特性の膜厚に対する依存性について調べた結果,両者が膜厚に大きく依存することが分かった。また,結晶性と電気特性の間には必ずしも直接的な相関がみられず,それぞれが成膜条件に基づいて別の要因で支配されていることが明らかになった。更に詳しく調べるため,Pドープ層(上層)とノンドープ層(下層)の2層構造による膜特性の評価を行なった。下層の微結晶シリコン薄膜の成膜条件及び膜厚を変化させ,上層膜をプローブ層として,結晶性と電気特性を調べた。その結果,上層の成膜条件がー定であっても,その膜特性が,下層の結晶性に強く依存することが実証された。この結果は,単層の微結晶シリコン薄膜を作製する場合においても成り立つことを示唆する。
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