遅延効果に及ぼす空間分布の影響について基礎的知見を整理するために、本年度は、物理モデルの作成、シリカ鉱物、ケイ酸およびシリカコロイド共存系における核種の鉱物への収着挙動、物理モデルにおけるトレーサー応答の測定およびその解析モデルの検討を行った。 1.遅延効果が空間的に一様でない物理モデルの作成 シリカ鉱物およびガラス粒子、シリカゲル等を用いた充填層により、遅延効果が空間的に一様でない二次元の流動場(200mm×100mm×10mm)を作成した。また、充填粒子の収着特性を把握するために、溶解や析出を伴った粒子表面へのEuの収着挙動を検討した。その結果、Euの固体粒子への収着率はシリカ鉱物、ケイ酸および分散しているシリカコロイド中に存在する解離基(≡SiO^-)の量により支配され、見かけ上複雑な挙動を示すことが明らかになった。 2.物理モデルを用いたトレーサー応答 作成した流動系にトレーサーを注入することによって、擬似的なインパルス応答を得た。トレーサーとしてはEu(No_3)_3、CsClおよびKClを用いた。応答は、Euについてはアルセナゾ-IIIによる比色法により、KおよびCsに関しては流出流体の電気伝導度より求めた。Kについては遅延効果はなく、EuおよびCsの遅延効果が認められた。Csについては遅延効果に対する流速や粒径分布の依存性およびそれに伴うみかけ上の混合拡散を確認した。 3.数学モデルの作成準備 上記(2)の実験結果は主に次年度に解析する予定であるが、本年度から実験結果を勘案しながら二次元の数学モデルの作成準備を行った。このモデルは連続の式、浸透率分布を考慮したダルシー則およびKdモデルを組み込んだ移流-分散方程式(物質収支式)からなる。遅延効果の空間分布について比較的単純な場合の応答を求めたところ、上記の実験結果と調和的であることを確認した。
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