研究概要 |
著者らはこれまでに水田の湛水層が昼夜を問わず対流していることを見出しているが,対流速度については計測法が確立されていなかった.そこで,水田湛水層の対流速度を測定する方法を開発し,実際の圃場で対流速度を測定した.具体的には土壌の熱伝導率を測定する双子型非定常ヒートプローブ法を応用し,水田の特徴である不均一な流れを考慮に入れた平均対流速度を求める方法として確立した.この結果,対流速度は日周変化し,最大は太陽放射が最大となる時刻であり,約0.1cm/s,最低は日の出前であった.また,これと同時に湛水層の最上層,すなわち,水面と最下層である土壌表面との間の温度差と対流速度との間に相関関係を見出した. 湛水層の対流にともなって移動する溶存物質のなかで,とくに重要な酸素および炭酸ガスについて日変化を自動計測した.酸素は水中の光合成細菌によって生成されており,日中は過飽和に夜間は不飽和になっていること,これに対応して炭酸ガスは酸素とは逆の濃度変化をしていることを見出した.しかし,完全に1:1の関係になく,ヒステリシス・ループを描いていた.この原因が,2つのガスの放出速度と吸収速度の差にあること,これらの速度が対流速度とも関係していることを明らかにした.これらの関係を用いて解析することにより,湛水層中における光合成速度,呼吸速度,ガス交換速度を分離することができた.また,これらの関係から得られた酸素の発生速度と炭酸ガスの消費速度とは,1:1の関係にあることを明らかにした.
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