研究概要 |
閉鎖的水域である宍道湖において採取された生物のダイオキシン類の濃度を測定した。対象とした生物種は、魚介類としてスズキ、コノシロ、サッパ、マハゼ、及び、ヤマトシジミ、それらを餌にする水鳥としてキンクロハジロとカワウであり、魚介類は全身を、水鳥は筋肉を分析した。ダイオキシン類の実濃度が最も高かったのはヤマトシジミであり、多様なダイオキシン類同族体が存在していた。また、ヤマトシジミをもっぱら餌にしているキンクロハジロはシジミにおける組成の影響を受けたと見られるダイオキシン組成を示した。しかし、非2,3,7,8-塩素置換体の組成割合は低下していた。これに対し、魚類とカワウは毒性の高い2,3,7,8-塩素置換体を中心とするダイオキシン組成を示した。特にカワウではその傾向が顕著で、非2,3,7,8-塩素置換の異性体はほとんど存在しなかった。これらのことは食物連鎖において非2,3,7,8-塩素置換の異性体の組成割合が特異的に減少していくことを示している。毒性等価濃度(乾燥試料当たりのWHO-TEQ)では、カワウ>キンクロハジロ・スズキ・コノシロ・マハゼ>サッパ>ヤマトシジミの順で高濃度であった。同時に測定したノンオルトーコプラナーPCB濃度(WHO-TEQ)においても、ほぼ同様な順序であった。これらのことから、魚類をもっぱら餌にするカワウにおいて高濃度に毒性の高いダイオキシン類が蓄積していることが確認された。今後、窒素同位体比の解析からこれら生物の食物連鎖上の位置を推定し、もって食物連鎖とダイオキシン類の生物濃縮との間の関係について解析を進める予定である。
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