研究概要 |
富山県,岐阜県,長野県,京都府内の寺院や神社で床板などの建築部材として用いられているケヤキの木口面をデジタルカメラや携帯型スキャナーなどで記録したほか,寺院や神社の修理の際に取り替えられた古い部材の収集にも努めた。現生木の材料としてはケヤキの伐根や剪定枝などから円盤やコアを採取したほか,製材所などで乾燥中のケヤキ原木の木口面画像を携帯型スキャナーなどで記録した。現在のところ,1998年から1660年代までさかのぼる年輪について解析を進めているが,試料の大部分は明治以降のものに限られている。限られた試料数ではあるが,ケヤキの年輪幅におよぼす気象要因の影響を予備的に検討したところ,寒さが厳しく降雪量も多い冬の気候と,夏み高温がケヤキの肥大成長を促進するということになる。これはスギに関する解析結果と逆の方向性を示すものであるが,植物生理学的な意味については不明である。今後,試料を追加するとともに,デンドロメーターを用いた調査も含めてケヤキの肥大成長におよぼす気象要因の影響について明らかにしていく予定である。また,明治期以前の気候とケヤキ年輪幅との間の関連を検討することも目指しており,現在のところ氷見(富山県氷見市)の町役人が書き記した江戸時代末期(1827〜1859年)の日記(『應響雑記』)から日々の気象に関する記載を取り出し,データベース化を進めている。
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