研究概要 |
富山県内におけるケヤキの垂直分布の上限と考えられる標高500〜600mの天然林(黒部峡谷鐘釣および立山町材木坂)のケヤキ生立木から成長錐を用いてコアサンプルを採取したほか風倒木から円盤試料を採取した。鐘釣と材木坂で採取した7個体,16方向の試料のほか,前年までに富山平野で採取したケヤキの伐根や落枝にもとづいて西暦1775年〜2003年の間の年輪幅標準曲線を作成した。なお,前年度までに測定した建築部材等のデータも含めると現時点で西暦1660年代にまでさかのぼる試料を得ているが試料数の限界から,年輪幅標準曲線としては1775年以前には延長できていない。 黒部峡谷鐘釣で採取したケヤキのコアサンプルについて,伏木測候所(富山県高岡市)における気象観測値にもとづいて,肥大成長におよぼす気象要因の影響を重回帰分析によって検討した。その結果,5月と7月の降水量が正の寄与を示すことが明らかになった。 また,明治期以前の気候とケヤキ年輪幅との間の関連を明らかにすることを目的として過去の記録を整理しており,氷見(富山県氷見市)の町役人が江戸時代の末期(1827〜1859年)に長期にわたって書き記した日記(『應響雑記』)から日々の気象要因(寒暖と降水現象や積雪深)に関する記載を抽出して,データベース化を進めた。
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