研究課題/領域番号 |
11680529
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 けんし 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (10303596)
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研究分担者 |
小池 真 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (00225343)
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キーワード | 対流圏 / 成層圏 / 大気化学環境 / 多成分同時観測 / 鉛直積分量 / 高分解能フーリエ変換型赤外分光計 / 季節変動 / 流跡線解析 |
研究概要 |
フーリエ変換型高分解能赤外分光計を用いた対流圏大気微量成分分子の連続観測を行った。観測は、北海道母子里観測所(北緯44.4度)、陸別観測所(北緯43.5度)で実施した。C_2H_2、CO、C_2H_6、HCNなどを同時に観測する多成分同時観測を実施した。スペクトルを解析し、微量成分の鉛直積分量(対流圏全体の総量)の導出を行った。CO、C_2H_2などの季節変動が、HCNと同様の変動を示していることが初めて明らかとなった。この結果は、これら大気成分のソースが同一である可能性を示している。1995年5月から2000年6月の間に対流圏の平均的な濃度が年毎に-2.10±0.30%(CO)、-2.53±0.30%(C_2H_6)、-3.99±0.57%(C_2H_2)、-0.93±0.49%(HCN)の割合で減少傾向にあることも明らかとなった。明らかな減少傾向を示しているのは、これらの直接的ソースとなる人間活動からの放出量の減少や、成層圏オゾンの破壊によって対流圏に入射する太陽紫外線の量が増加したためであると考えられる。対流圏における太陽紫外線の増加は、対流圏における光化学反応で生成するOHラジカルの増加をもたらすので、OHとの化学反応が効率よく引き起こされて、CO、C_2H_6、C_2H_2が減少したものと考えられる。次に、これら微量成分の移流過程を明らかにすることを目的として、後方流跡線解析や人工衛星TOMS(Total Ozone Mapping Spectrometer)とのデータ比較を行った。その結果、アジア大陸におけるバイオマス燃焼がこれら微量成分のソースとして非常に重要であることが分かった。本研究では、これまで連続的な観測が皆無であった境界層より上の自由対流圏の大気成分観測に注目することで、アジア大陸から太平洋域への物質輸送や濃度の季節変動などについて、グローバルな大気環境変動を定量的に理解する上で非常に新しい知見を得ることができた。
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